「売る店」ではなく、「買っていただく」店


この言葉は『サービスの底力!』(PHP研究所刊)に出てきた言葉です。
著者はホンダ車ディーラー顧客満足度日本一、2004年度日本経営品質賞受賞の
ホンダクリオ新神奈川社長の相澤賢二(あいざわ・けんじ)さん。
相澤さんは次のように書いています。


当社は、「売る店」ではありません。あくまで、「買っていただく」店だと、自分では思っています。
「買っていただく」ためにはまず、「来ていただく」。
そのためにはどうしたらいいか、という風に、どんどん知恵を絞っていくわけです。


例えば、私は毎日、道路の向こうから店を見ています。
お客様は外から入ってきます。
だから、一日一回道路の向こうから店を見ることで、
お客様の視点で社員のやっていることを一日一回は確認する、ということが大事になってくるのです。


お客様の視点を持てば、今まで当たり前と思われていたことが、どんどんおかしく見えてきてしまいます。
例えば、ポスター一つ取ってみてもそうです。
普通のディーラーというのは、店内にも車の販促用ポスターがバンバン貼ってあるものです。
でも、そもそも店内に入ってくるお客様っていうのは、ある程度車を買おうと思われているお客様ですよね。
そんな人に対してポスターで車のアピールをしたところで、どうなるものでもないのです。
だから、店内に「売らんかな」の広告は、うちでは禁止です。


入りやすい店の、もう一つ大事な条件は、「いつも誰か、お客様がいる」ということです。
だって、バーやクラブだって、お客様が誰もいないと入りづらいでしょう?
だから、常にお客様が一人でもいるという状態にしておくことが大事なのです。
例えば、当社でもキャンペーンやイベントを定期的に行っていますが、
これは既存顧客に気軽に店を訪ねてきてもらうためのものです。
決してその場で売ろうと思っているわけではないのです。


また、買っていただいたお客様への納車の際は、お届けするのではなく、店頭に来てもらっております。
やはり来て頂いたほうが店も華やかになりますし、社員も緊張感を持って、しっかり説明することができます。
その代わり、納車の際にはガソリンは満タンにして、納車費用も取りません。
これが、来てもらうことへのお礼、ということになりますね。


まず「売らんかな」ではなく、「人に来てもらう」という仕組みを考える、というのが重要です。
遠回りに思えるかもしれませんが、それが確実に売上にも繋がるのです。



まず来ていただく。
リアルな店舗であろうと、ネットショップであろうと同じことですね。
あなたはどんな工夫をしていますか?
この本は月刊トークス2005年5月号でご紹介しました。
 http://www.talksnet.jp/backnumber_2005.html#200505