先回りしてものをつくる


この言葉は『百万分の一の歯車! 』(中経出版刊)に出てきた言葉です。
著者は世界一小さい歯車を作った樹研(じゅけん)工業社長の松浦元男(まつうら・もとお)さん。


松浦さんがソニーの八ミリビデオの部品を受注する前に、
ソニーの購買担当者とこのような会話があったそうです。


「当社で今度、手のひらサイズの八ミリビデオカメラをつくるんだが、そちらで部品をつくってみるか」
「それはこんなもんでしょう」と松浦さんは、あらかじめ試作しておいた歯車を差し出しました。
「えっ!なぜそれを?どこから話が漏れたんだ!?」
松浦さんはビデオカメラを小さくしたいらしいというような話は噂には聞いていたので、
先回りしてサンプルを開発しておいたのです。


オールプラスチックで時計のムーブメントをつくった時も同じでした。
どこからか開発を依頼されたからではありませんでした。
「次はこうなる、その次はこうなる」と先回りしていたのです。


松浦さんはいいます。
部品メーカーは受注を待っているのではなく、先回りしてものをつくっておくべきです。
先回りしておくということは、世の中にないものをつくるということ。
つまり、世界一のものをつくるということです。


先回りしてものをつくるから、用途はまだない世界一小さい歯車を作れるんでしょうね。
そのもの自体の用途はまだなくても、
「そんなものがつくれるのなら、こういうものがつくれないか」という引き合いが
たくさんくるといいます。
オンリーワン企業の強みですね。


この本は月刊トークス2003年9月号でご紹介しました。
http://www.talksnet.jp/backnumber_2003.html#200309