ラジオは脳にきく


この言葉は『ラジオは脳にきく』(東洋経済新報社刊)のタイトルです。
著者は和歌山県立医科大学脳神経外科教授の板倉徹(いたくら・とおる)さん。
板倉先生は次のように書いています。


なぜ、ラジオが脳にとっていいのでしょうか。
それは映像による情報がなく、音声情報しか脳に届かないため、
脳は得られない情報を補おうと働くからです。
視覚情報がないだけに、何気なく聞いているようでも脳全体は活性化されています。
例えば、天気予報をラジオで聞いているとしましょう。
降水確率20%という数値を頭に入れるためには集中して聴いていなければなりません。
うっかり聞いていると数値は頭に残りません。
つまり、毎日ラジオを聴いていると自然と集中力が高まることになるのです。


ラジオの良い点はまだあります。
ラジオを聴きながら他の作業ができるという点です。いわゆる「ながら族」です。
「ながら族」がどうして脳の活性化に良いのか、少し理解しにくいかもしれませんが、
脳科学的に考えてみましょう。
同時に二つの事を行うというのは、脳にとってかなり負担のかかるものです。
しかし負担がかかる、ということは言い換えれば脳を大変活性化させていることになります。


このことを裏付ける医学的事実があるので紹介しましょう。
アルツハイマー病の初期の患者さんはこの「同時に二つの事を行う」ことができなくなります。
靴の紐を結んでいる人に、あなたの住所はどこですか、と聞いてみるとわかります。
たいていの人はこともなげに、紐を結びながら住所を答えるでしょう。
しかし、アルツハイマー病の人にとって、これは大変な難問題です。
ラジオはこのように「同時に二つの事をする」という困難な作業を
毎日行うような環境をつくっているといっても過言ではありません。




私は小さい頃からラジオドラマが大好きでした。
今もいわゆるオーディオブックで小説などを楽しんでいます。
トークスもバックナンバーを聴きなおしながら、このブログを書いています。
聴くことが脳にいいなんて、嬉しいですね。
この本は月刊トークス2007年1月号でご紹介しました。
 http://www.talksnet.jp/backnumber_2007.html#200701