主目的を変質させてはいけない


この言葉は『パイロットが空から学んだ危機管理術』(インデックス・コミュニケーションズ刊)に出てきた言葉です。
著者は国際線ジャンボジェット機長の坂井優基(さかい・ゆうき)さん。
坂井さんは次のように書いています。


社会で起こっているいろいろな不具合の根本原因に、主目的、メインの目的の変質があります。
主目的が変質すると事故が発生します。
小学生の子供に「原子力発電所の目的」を聞いても、「安全に安定して電気を供給すること」と答えてくれます。
恐らく社会全体がこのように思っていますし、これが原子力発電所に与えられた使命です。


ところが長い間安全が続いていると、安全なのは当然として安全のことを考えの外に置くようになります。
そうなると電気会社の中の一部の組織や人の間で、いつの間にか
「一日止めると三億円の損になる。停止と起動には何日もかかるのでなるべく止めないこと」
というのが主目的になってしまったり、
「一円でもコストを安くする」ということが主目的になってしまいます。
その結果、不具合が報告されても何とか次の定期点検まで走らせ続けようとして、たくさんの方の命が失われ、
結果として最初に嫌がっていた停止期間の何十倍もの期間、停止せざるをえなくなったりしてしまいます。
主目的を変質させてはいけないのです。



本来の目的を見失わない。
大切なことですね。
この本は月刊トークス2006年7月号でご紹介しました。
 http://www.talksnet.jp/backnumber_2006.html#200607