「見える化」とは「見せる化」である


この言葉は『見える化』(東洋経済新報社刊)に出てきた言葉です。
著者は早稲田大学大学院教授であり、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファーム
ローランド・ベルガー日本法人取締役会長の遠藤功(えんどう・いさお)さん。
遠藤さんは次のように書いています。


見える化」を勘違いしている、もしくは正しく理解していない取り組みに多数遭遇します。
一番多い勘違いは、様々な情報をオープンにさえすれば「見える化」は達成されると思っていることです。
多くの人たちが情報を共有すること自体は決して悪い取り組みではありません。
しかし、一般的な情報共有は相手が「見よう」という意思を持っていることが前提になっています。
見える化」の基本は、相手の意思にかかわらず、様々な事実や問題が「目に飛び込んでくる」状態をつくり出すことです。
「人間は問題が目に飛び込んでくれば行動を起こす」という動物的本能に訴えかけるのが「見える化」のポイントなのです。


見たくなくても目に飛び込んできてしまう――そんな「見える化」の状態をつくり出すには、ではどうしたらよいのでしょうか。
たしかにアンドンに代表されるような仕組み・仕掛けを工夫することは、極めて重要です。
では、「見える化」の仕組み・仕掛けを考案し、導入しさえすれば、「見える化」は定着するのでしょうか。


残念ながら、仕組み・仕掛けだけでは実際には「見える化」は機能しません。
多くの場合、「見える」ようにするためには、
クレームや失敗、事故などの「見せたくないもの」であっても「見せる」という意思や行動が必要となります。
見える化」とは「見せる化」であり、「見せよう」という意思と知恵がなければ、「見える化」は実現できないのです。


そして、「見せよう」とする主体はあくまで「人」です。
当たり前のことですが、機械やIT自体には「見せよう」という意思はありません。
真の「見える化」を実現するとは「見せる化」を推進することであり、
そのためには、「見せよう」とする「人づくり」こそが鍵なのです。



大量の在庫や失敗等、見せたくないものはいろいろありますよね。
それを見せるようにする。
そういう勇気をもった社員を育てる。
それが「見える化」への第一歩なんですね。
あなたの会社はいかがですか?
この本は月刊トークス2005年12月号でご紹介しました。
 http://www.talksnet.jp/backnumber_2005.html#200512