土俵を変える


この言葉は『反対尋問の手法に学ぶ 嘘を見破る質問力』(日本実業出版社刊)に出てきた言葉です。
著者はたくさんの本を書かれている弁護士の荘司雅彦(しょうじ・まさひこ)さん。
荘司さんは次のように書いています。


ビジネス上の交渉をしているときに、相手方が専門家を連れてきて、
あなたを煙に巻こうとしているような場合、
どのように太刀打ちしていけばよいのでしょうか。


相手の専門領域について自信がない場合は質問事項を少しずらす、
つまり「土俵を変える」という作戦が有効になります。
たとえば、相手が医師だとします。


「失礼ですが、先生は、本件の症状に関して何件ぐらい処置された経験がおありですか?」
「ここ1年間の間ではどうですか?」
というように、経験や経歴に質問の焦点をあてるのです。


そうすると、多くの人が驚くでしょうが、
実際に問題となっている症状を処置した経験がない医師が
証言席に座っていることが案外多いのです。
そしてたいていの場合、
「憶えていませんが、4、5回くらいですかね……」などとごまかそうとします。
そういうときは、
「一番最近で処置した日でも月でも結構ですので教えてください」
と食い下がると、困ってしまう相手がいます。


このように、土俵を少しずらすことによって、
つい過大評価しがちな専門家を「普通の人」にしてしまうという作戦が、
専門家対策としては有効なのです。



「土俵を変える」
あなたも専門家を相手にする際には、思い出してください。
この本は月刊トークス2008年9月号でご紹介しました。
 http://www.talksnet.jp/backnumber_2008.html#200809