育つのは若者たち自身


この言葉は『メジャー初コーチの「ポジティブ・コーチング」』(講談社刊)に出てきた言葉です。
著者は日本人として初めてメジャーリーグのコーチになられた立花龍司(たちばな・りゅうじ)さん。


立花さんは中学時代にはピッチャーとして全日本に選ばれてアメリカへ遠征に行ったりもしましたが、
高校で肩を痛め、プロ選手になるという子どもの頃からの夢を閉ざされたそうです。
もう自分のような思いをする選手はいらない。自分がそういう選手をなくそう。
そして、日本にはまだ一人もいなかったコンディショニング・コーチを志したのだそうです。


それまで日本の野球の世界では、画一的なトレーニングを行うことが重要視されてきました。
皆、同じ距離を走り、同じ数だけ腹筋運動をし、同じ数だけ素振りをし、同じ数だけノックを受ける。
それに指導者は誰も疑問を持っていなかったと、立花さんは書いています。


選手個人個人で体質、特徴、伸ばすべきポイントが異なります。
個々に合わせたトレーニング・メニューを作成して取り組んだ方が、はるかに効果的です。
その考えのもとに、立花さんは、近鉄、ロッテ在籍中は、独自のメニューを作ってきました。


その後、立花さんはメッツのコーチに就任。
アメリカでは、主役は選手であるという考えが徹底していたと次のように書いています。


どんなに正しいことを言っても、いい指導をしても、
本人に「これがいいんだ」と思わせなければいい結果は導き出せないものです。
指導する側の人間が、育て上げることは不可能なのです。
育つのは若者たち自身です。
そのための助走がうまくいくようにし、
同じ目線に立って伴走するのがコーチ、指導者の役目なのではないでしょうか。



これは野球だけではないはずですね。
他のスポーツや習い事でも同じでしょうし、ビジネスでも同じではないでしょうか?


この本は月刊トークス2002年4月号でご紹介しました。

 http://www.talksnet.jp/backnumber_2002.html#200204